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漫画ライアーゲームから学ぶ『ゲーム理論』と『心理学』

心理学や行動経済学のジャンルの本を何冊か読んだあとに漫画の『LIAR GAME』を読むと非常に良い復習になりました。
絵もあり、ストーリーもあるので、漫画の内容はすごく記憶しやすいですよね。
普通の読書もこれくらい記憶に定着してくれればいいのに・・・・。
ということで、今回は漫画ライアーゲームに出てくる心理学のテクニックを紹介したいと思います。

本記事では、漫画『LIAR GAME(ライアーゲーム)』に出てくる『ゲーム理論』や『心理学』について紹介します。

※ほかの記事で、ここ3年間で本600冊読んでいると言っていますが、漫画は含まずに600冊です。念のため・・・。

この記事はこんな方におすすめ

  • ゲーム理論を基礎を知りたい
  • 心理学のテクニックを知りたい
  • ライアーゲームが好きな人

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ゲーム理論

ゲーム理論(ゲームりろん、英: game theory)とは、社会や自然界における複数主体が関わる意思決定の問題や行動の相互依存的状況を数学的なモデルを用いて研究する学問である 。

ゲーム理論 - Wikipedia

簡単に言うと、お互いに利害関係を持つ2人以上の主体(人間や会社など)が自分と相手の利益を考えた上で、最適な行動を決めるための理論・思考法です。

そのゲーム理論のモデル例として有名なものに『囚人のジレンマ』という代表モデルがあります。

人間は基本的には利己的であり、利己的な行動を取ることにより、全体として最適な行動を取れなくなることを証明した理論モデルです。

ライアーゲームはこのゲーム理論、特に囚人のジレンマをベースとして、漫画内のゲームが展開されていきます。

囚人のジレンマ

ある犯罪の容疑者が2名(容疑者A・容疑者B)います。

各々別室で尋問を受けることになりました。
2人の容疑者に与えられた選択肢は「自白する」「黙秘する」の2択です。

そして各々の自白の選択肢により、彼らが受ける罪の重さが変わります。
(下図)

  • 容疑者A:自白 容疑者B:自白 → 容疑者A:懲役5年 容疑者B:懲役5年
  • 容疑者A:自白 容疑者B:黙秘 → 容疑者A:無罪 容疑者B:懲役10年
  • 容疑者A:黙秘 容疑者B:自白 → 容疑者A:懲役10年 B容疑者:無罪
  • 容疑者A:黙秘 容疑者B:黙秘 → 容疑者A:懲役2年 B容疑者:懲役2年

上記の状況ではそれぞれの容疑者はどのような行動を取るでしょうか?容疑者Aの立場で考えてみましょう。

容疑者Aが自白を選択した場合は懲役5年か無罪黙秘を選択した場合は懲役10年か懲役2年。一番魅力的な結果の無罪は自白をした場合、一番悲しい結果の懲役10年は黙秘をした場合となるため、なかなか黙秘を選べない状況ですね。

ただし、自白を選んだ場合、相手も自白すれば懲役5年になり、お互いが黙秘を選択した場合の懲役2年より罪は重くなってしまいます。

このように、お互いが最適な選択をしたにも関わらず、協力した場合よりも悪い結果が生まれる可能性のある状況を「囚人のジレンマ」といいます。

またお互いが黙秘を選び、懲役2年となり全体としての利益を最適化した状態のことを『パレート最適』、お互いが最大のリスクである懲役10年を避けた結果、懲役5年となってしまう状態のことを『ナッシュ均衡』と言います。

このように個々人にとっての合理的な判断となる『ナッシュ均衡』と、全体の利益が最大化される『パレート最適』が必ずしも一致しないという矛盾を表現しているのが『囚人のジレンマ』です。

この『囚人のジレンマ』のように、ゲームの参加者が他の参加者を騙すことで自分の利益を求めると、実は参加者の取り分が胴元(事務局)側に奪われていくという状況がライアーゲーム内で展開されます。

自分たちが不利益になろうとも、裏切られても常に協力してパレート最適を目指す神崎直とそれを助ける秋山深一常に自分の利益を考えて裏切り続ける他のプレイヤーたちという視点でLIAR GAMEを読み返すのも楽しいですよ。

次からは、実際に漫画ライアーゲームに出てきた心理学の要素を説明していきます。

動作

人間はとっさの動作では嘘をつけません。

人間の動きのメカニズムは感情⇒動作⇒言葉の順になります。

言葉で嘘をつけても、とっさの動作では嘘がつけないのが人間です。

動作

1巻:一億円争奪ゲーム(藤沢先生)
①嘘をつく時に神崎直の目を見ない
②家から一歩も出ない

2巻:少数決ゲーム
③敗退が決まった人達が淡々と退場していく

8巻:回らないルーレット
④嘘をつくと2,3回まばたきをする

①嘘をつく時に神崎直の目を見ない
学生時代の恩師の藤沢が神崎直から一億円を奪うために、貸金庫に一緒に預けようと嘘の提案をします。
この藤沢は非常に動作に本音が現れやすいキャラとして描かれています。

②家から一歩も出ない
藤沢は一億円は貸金庫に預けていると嘘をついています。秋山たちにずっと監視されているにもかかわらず、何があっても家から一歩も出ようとしないところ、秋山に一億円は自分の家に隠していることを見抜かれます。

③少数決ゲームにおいて、数億円の負債を抱えて敗退していく人達が暴れるでもなく淡々と退場していく様子から、秋山が違和感を感じとります。最終的には仲間になるフクナガの初登場ゲームでしたね。

④神崎直が『嘘をつくと2,3回まばたきをする』という嘘の情報を相手チームに流して、相手を騙します。もちろんその後負債を肩代わりして救済します。

他にも、嘘をついたら走ってその場からいなくなる、など動作に変化を見せて、嘘を見抜くシーンが出てきます。

あなたも周りの人の動作に気をつけることで、何かの気づきがあるかも知れませんね。

以下に、おすすめの本を紹介しておきますね。興味ある方はぜひ。

認知的不協和

認知的不協和

1巻:一億円争奪ゲーム(藤沢先生)
自分と周囲の環境に不協和が生じていると不安を感じる

一億円ゲームにおいて、秋山が藤沢から判断力を奪うために使ったテクニックです。

認知的不協和とは、 自分と周囲の環境に不協和が生じていると不安を感じ、その不安を周囲と同調(協和)させてしまうことを言います。

漫画内では、自分は正解がAだと思っているのに、周りの人間がBと答え続けているのをみていて、つい自分が答えを発言する場面でBと答えてしまう状況と説明されています。

藤沢は頑丈な金庫に入れている二億円が盗られるはずはないと考えていますが、必ず奪い返すという秋山の自信満々の態度に不安を感じ、それに同調していってしまいます。

その結果、平常心を失い、金庫の前から動けなくなってしまいます。そしてその結果、最後の最後で藤沢は油断をしてしまいゲームに負けることになります。

このテクニックはセールスなどでもよく使われています。

『こんなに食べても太らない』『歩くだけで走るよりカロリー消費』

典型的な消費者に「え?」と感じさせて興味をひく手法です。ネットビジネスもよくこういう表現をみますよね・・・。気を付けましょう。実際の社会のほうがよっぽどライアーゲームです。

ドア・イン・ザ・フェイス

次はドア・イン・ザ・フェイス・テクニックです。

ドア・イン・ザ・フェイス

10巻:感染ゲーム
人間は大きな要求を断った後には、それよりずっと小さな要求を提示されると、いともあっさり受け入れてしまうという『返報性の心理』を応用したテクニック

内容、登場場面については、次の『返報性の心理』の箇所で合わせて詳しく説明します。

返報性の心理

返報性の心理

10巻:感染ゲーム
人間は負い目があると借りを返す形ですっきりしたいという心理が働く

「食料が十分に与えられない恵まれない子供たちのために3万円の募金をお願いします。」
「え?高いよ」
「では、1万円では・・・」
「うーん・・・」
「では、500円でお願いします。」
「まあ、それくらいなら・・・」
「ありがとうございました!!」

まさにこれが、『ドア・インザ・フェイス・テクニック』と『返報性の心理』を応用している状況です。

最初の3万円が見せ球です。高いから無理と思わせ、募金を断るという罪悪感を植え付けて、何度も断ることで、申し訳ない気持ちを解消したいという心理へ誘導して、最後に500円を勝ち取ることができました。

募金自体は非常に素晴らしい活動ですが、これを利用した詐欺もあるので注意しましょう。

ライアーゲーム作中では、ゲームの勝ち上がりが確定しているマッチョ(カワイ)とポマード(サエキ)に対して、神崎直が他の人を助けるための協力を何度もお願いします。

マッチョとポマードは他人を助けるために何度もお願いに来る神崎を断り続けることで、負い目を感じ始めます。

そのタイミングで秋山が彼らにノーリスクな協力を依頼することですんなり協力してくれることになります。

このあと、神崎が先入観を利用し、ヨコヤを騙すという私が非常に好きなシーンへと進んでいきます。

ちなみに、毎回ご飯をご馳走してくれる先輩の仕事を優先したくなるのも、お店で試供品や試食をしたら買わないといけない気がするのも、この『返報性の心理』です。

世の中、特にセールスの場面においては、非常に様々な心理学のテクニックが使用されています。

コールドリーディング

占い師がよく使うコールドリーディングです。

コールドリーディング

13巻:椅子取りゲーム
宗教『泰平天国』の教祖ハリモトが昔、占い師をしていたときに使ったテクニック、主には、相手に自分の言うことを信じさせる時に用いる話術

コールドリーディングは話術の一つです。何気ない会話を交わしたりするだけで相手のことを言い当てたふりをして、相手に「わたしはあなたよりもあなたのことをよく知っている」と信じさせる話術です。

コールドとは事前の準備なしでという意味で、リーディングは相手の心を読みとるという意味になります。

作中では、占い師だったハリモトが相談に来た女性に「あなたは究極の選択をしようとしましたね?」と尋ねます。相手の女性ははっとするのですが、これにはカラクリがあります。

そもそも、占いをしようと思っている人は悩みごとも持っており、悩みごとを持つ人間は皆、転職結婚離婚自殺など究極な選択をしようとしている可能性が高く、それを逆手にとったテクニックがこのコールドリーディングです。

コツは、具体的に自殺などの言葉を使わずに究極の選択と表現している部分にあります。

私も挑戦してみます。

あなたは今、人生において、何かしらの悩みを抱えていますね?

どうでしょうか?当たりましたか?

私はライアーゲームの登場キャラの中でこの『ハリモト』と『泰平天国』の設定がかなり好きです。
入信する機会があれば、五千歳くらいを目指したいですね。

決勝戦)ゲーム理論

冒頭でも解説しましたが、ライアーゲーム最後を飾るのはこの『ゲーム理論』になります。

囚人のジレンマ

19巻:四国志ゲーム
魏・呉・蜀・倭チームに分かれ、毎ターン「攻撃・防御・何もしない」を選択し、相手のLP(ライフポイント)をゼロにしていき最後まで生き残ったチームが勝つゲーム
最終的に残った2チームの決着がつかないように秋山がゲーム理論の基本概念を利用する

4つの国で戦うため、攻撃・防御対象が3つずつ、各ターンの選択は3つまでと色々ルールはありますが、残り2国の戦いとなった際のルールは下記の3つになります。

・攻撃・防御の行動を選択するとLPが1消費される
・攻撃されている時に防御していないとLPが3消費される
・攻撃されている時に防御していると行動分のLP1のみ消費される

これを考慮し、各作戦執行後のLP(ライフポイント)差を表にすると、

この表から、こちらの作戦が「何もせず」を選択した時が一番リスクが高くなることが分かります。
(※相手の選択肢の2/4がマイナス、また期待値も-0.5となり最悪)
このことから、相手も「何もせず」を選びにくいと予想することができます。

相手が「何もせず」を選ばないと考えると、先ほどの表はこのようになります。

この表からだと、「防御」を選択するのが、一番リスクがない選択であるということが分かります。

秋山は残った2チームにこの「防御」を選ぶのが最適ということを伝え、最後までゲームに決着がつかないよう誘導していきます。

最後の結末はぜひ原作で・・・。

まとめ

本記事では、漫画『LIAR GAME(ライアーゲーム)』に出てくる『ゲーム理論』や『心理学』について紹介しました。

漫画って本当に記憶に残りやすい。。。人間にとって視覚からの情報ってすごいんですね。

作者の甲斐谷忍さんは心理学のテクニックを用いた作品が多くLIAR GAMEの他にも『ONE OUTS』という野球漫画もおすすめです。

漫画だけでなく、心理学を学べる本も読んでいて面白いものが多いので、以下におすすめの書籍のリンクを貼っておきます。

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