知識/ビジネススキル

トヨタ流「問題解決の8ステップ」と「A3資料作成術」

仕事の資料作りって難しいなぁ・・・

トヨタでは資料をA3用紙一枚でまとめるって聞くけど、どんなのかな?

仕事の資料作りについての悩みを持つ人は多いのではないでしょうか?

本記事では、こんな悩みを持つ方のために、トヨタ流「問題解決の8ステップ」と「A3資料作成術」について解説します。

どのような報告資料でも基本的には、本記事で説明する問題解決手法と同じPDCA(後ほど説明します)の流れで書くことになるかと思います。

簡単な報告の場合、結果や結論だけしか書かないのでは?と思うかも知れません。
しかし、それはあなたと報告される側で計画や目的などといった前提条件が共有されていて、書く必要がない、あるいはあえて書いていないだけなのです。

基本となるテンプレさえ覚えていれば、必要な箇所を残し、不要な部分を減らすこともできるので、どんな資料作りでもかなり楽になりますよ。

こんにちは、Kです。
私がトヨタ関連の方と仕事をご一緒した時に学んだ『トヨタ流問題解決』と『A3資料作成術』
そのすごさに感動し、本やセミナーなどからも学び続け、自分の仕事でも10年以上に渡り活用しています。

この記事はこんな人たちにおすすめ

・いつも資料作成に苦戦している
・問題解決手法の基礎を知りたい
・分かりやすい資料を作成したい

基本的な問題解決の流れを知り、実践することが最短の習得方法となります。
このことを考慮し、本記事では極力シンプルに手短に解説するようにします。

定量化、定性評価、視野・視座、推定など色々小難しい言葉で解説するのも可能ですが、まずは流れを知り、自分で実践するのが一番です。

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問題解決とは?

問題とは何か?

問題解決とは何か?を理解する前に、まずは問題とは何か?を知る必要があります。

問題と聞いてすぐ頭に浮かぶのは、

・学問なので答えを求める問いかけ
・人や国の間で起きる論争や課題
・困るような事柄


などではないでしょうか?

どれも正しいですが、仕事においては、

現状から理想のあるべき状態の間にある障害やギャップ

のことを問題と言います。

『あるべき姿』はゴールや理想的な状態、目的や目標です。

『障害やギャップ』は、お客様の不満や不安と読み変えることができます。

また、ここで言うお客様とは最終消費者ではなく、あなたが創り出す製品やサービスを受け取る人も含みます。

現状である製品の不良率が10%であれば、

あるべき姿:不良無し
現状:不良率10%

問題は10%の不良率

ピザを15分でお届けという店があれば、

あるべき姿:15分で配達
現状:18分で配達

問題は3分の配達遅れ

といった感じです。
必ずしも問題を数字で表現する必要はありませんが、マーケティングや製品企画、製品管理など、どのような仕事の場合でも問題解析を進めていく内に数字(データ)での表現が必要となるはずです。

問題解決とは何か?

問題=現状から理想のあるべき状態の間にある障害やギャップなので、

問題解決はその『障害やギャップの原因を取り除くこと=お客様の不満や不安を取り除くこと』と定義することができます。

問題を明確にし、その原因を追究し、最終的に問題をなくすことができる対策を完結させることが、仕事における問題解決と言えます。

問題解決の8つのステップ

トヨタ流の問題解決には8つのステップがあります。(下図)

『PDCAサイクル』という言葉を聞いたことはあるでしょうか?

PDCAサイクルとは

PDCAとは、Plan(計画), Do(実行), Check(評価), Action(改善)のそれぞれの頭文字を取ったもので、PDCAサイクルとは、計画⇒実行⇒評価⇒改善のサイクルをまわすことで、管理業務を継続的に改善していく手法のこと。
1950年代、品質管理の父といわれるW・エドワーズ・デミングに提唱された。

このPDCAサイクルのPlan(計画)の部分で論理的思考を活用し、より詳細なステップに分けたものが『トヨタ流の問題解決』です。

トヨタ流の問題解決では、Plan(計画)の段階でしっかりと取り組むべき問題を見極めます。

論理的思考・問題解決のベストセラー『イシューからはじめよ』でも、「取り扱う問題(イシュー)の質が上がれば、解の質も上がる」と表現されているよう、トヨタ流の問題解決は非常に理の適った手法であると言えます。

※トヨタ流の問題解決の方が歴史は古いです。

①問題の明確化

最初のステップは『問題の明確化』です。

問題とは何か?の項で説明しましたが、現状とあるべき姿のギャップが問題です。

現状:自社製品のシェアが2位
あるべき姿:シェア1位

である場合であれば、問題は、

問題:シェアが1位ではない事

となります。

もっと詳細に現状とあるべき姿を表現するべきという意見や指導をよく目にします。

『不良が10件』とするのではなく、『不良が10件あるため、発売日の納期に間に合わない』とするべきだという指導です。

私はここは本質さえ捉えていれば、シンプルな表現で十分だと考えています。

自分の役職や役割によって、あるべき姿や取り組むべき問題が変わるのは当然ですが、詳しく表現したつもりになって、あるべき姿や問題の幅を縮めてしまうことには注意が必要です。

あるべき姿や問題は大きく捉えましょう。

②問題のブレイクダウン

次のステップは『問題のブレイクダウン(層別)』です。

現状把握をして、どこで・いつ・何で・問題が起きているのかを探っていくステップです。

現状把握はどれだけ意味のあるデータを集めてこれるのかが勝負です。
意味あるデータ=事実から現状を知ることを心がけましょう。

4つ目のステップの要因解析と混同されることが多いですが、このステップのコツは、

What(何)、Where(どこ)、When(いつ)、Who(誰)で層別して、問題を深堀りしていくことです。
※『要因解析』はWhy(なぜ)で深堀り

例えば、

製造での不良を調査していく際には、Where(どこ)で層別して、どこの工程での不良が多いのか?

商品のシェアを上げたい場合には、Who(誰)で層別して、どの年代のシェアが低いのか?

各年代別 商品Aのシェア
・~10代:18%
・20代:11%
・30代:31%
・40代以上:33%

⇒20代のシェアが極めて低い

などと問題の発生個所を調べ、どこを対策すれば効果が大きくなるのかを探るのがこのステップです。

問題解決手法に慣れてきたら、フレームワークを活用して、問題のブレイクダウンや要因解析をしていくこともできます。

「取り扱う問題(イシュー)の質が上がれば、解の質も上がる」 ということを忘れずに!

ステップ①と②でしっかりと問題を見つけることができるかどうかが、問題解決の一番重要なポイントです。

③目標設定

3つ目のステップは『目標設定』です。

目標設定のコツ

・数値目標とする
・納期を決める
・チャレンジングな目標にする

問題解決は達成できたかどうかをしっかり評価する必要があります。
そのために数値目標をしっかり立てて、納期をしっかり決めましょう。ここで明確な目標設定ができていないと⑦評価のステップで、まともな評価ができません。

挑戦的な目標設定とすることも重要です。
人間、大きな目標を立てていた方が大きな結果を得れるものです。

例)
2022年3月までに、商品Aの20代のシェアを35%以上にする

④要因解析

続いて4つ目のステップ『要因解析

問題のブレイクダウンで特定した『取り組むべき問題』を起点に要因解析をします。

しっかり要因を探り、出てきた要因に対してもなぜ?を繰り返して真因まで探ることが必要です。

要因解析が不十分のままだと、対策の効果が薄くなります。


トヨタではこの要因解析を『5なぜ』といいます。

真因までたどり着き、しっかり効果が出る対策をするために5回はなぜ?を繰り返せ、という教えです。

下図のような、要因解析ブロック図などを使うことで、自分の頭も整理できますし、資料にする際も分かりやすい説明が可能です。

・要因解析がしっかりできているか自分で確認するコツ
「So what?/だから?」で1つ前の要因との関係がつながっているか、文脈がおかしくないか確認する
例)製品工程で不良が出ている、だから、検査での見逃しがある

私は、ブロック図で十分だと思いますが、特性要因図など色々な要因解析ツールがあるので、興味がある方は調べてみてください。

例)20代のシェアが低い問題に対する要因解析

⑤対策立案

5つ目のステップは『対策立案』です。

要因解析で洗い出した真因の対策を決めるステップです。

対策立案のコツ

・実行可能な対策とする
・責任者を決める
・納期を決める
・効果を見積もる
・優先度を決めておく

まずは、実現可能な対策を立案してください。

そして、責任者・納期・効果の見積もり、をしてスケジュールに落とし込みます。
一つの真因に対して、複数の対策が出来る場合は、対策案が多くなるので、何を優先していくのかも決めておきましょう。

例)対策立案

対策立案まで終われば、PDCAサイクルにおけるPlan(計画)の段階が終了します。

どのような仕事も計画が一番重要です。良い計画が立てれれば、自ずと結果も良いものとなります。

⑥実施

対策立案まで終われば、あとは対策計画を実施していくのみ。
このステップでは、実施した対策の結果や効果をしっかり把握しましょう。

ここでの結果や効果を、次のステップで評価していきます。

資料にする際には、結果をグラフで表現すると読みやすい資料になります。

例)商品Aのシェア推移の結果

報・連・相

この実施の段階では、上司や関係者へ進捗を報告・連絡・相談することも心掛けておきましょう。
どのような計画にも、状況の変化や不測の事態による進捗遅れが生じる可能性があります。
しっかりした成果をあげるためにも、変化点や懸案について関係者としっかり連携し、その都度対応していきましょう。

⑦評価

7つ目のステップは『評価』です。

・目標は達成できたか?
・実施計画に対しての遅れ進みはどうだったか?
・それぞれの対策の効果はどうだったか?
・思わぬメリット・デメリットがあったか?

などをしっかり評価します。

効果がいまいち出なかったものに対しては「どうすれば上手くいってただろうか?」、成功と思えるものに対しては「何が良かったのか?もっと良くできたのではないだろうか?」という視点で評価しましょう。

例)対策①②の評価

⑧標準化

最後のステップは『標準化』です。

横の業務やプロジェクトにも展開するという意味でトヨタでは『横展』とも言います。

・上手くいった対策を他の事例にも展開する
・反省点を次に活かす
・効果を定着させる
・今回の経験からより良くできる方法を次に活かす

など、

良かったことはしっかり標準化する、他の業務、他の部署へも展開する
悪かったことは再発しないようにしっかり対策する


ステップです。

対策立案と同じく「納期」をしっかり決めて、標準化していきましょう。

例)反省点の振り返り

20代にささるSNSの選定が甘かった
⇒広告を出すSNSを増やし、購入者アンケートから各SNSの効果代を分析

ここまでで問題解決の8つのステップの説明は終わりです。

続いて、『A3資料作成術』の説明に移ります。

A3資料作成術

基本はここまでで説明した8つのステップ(もしくは5つのステップ)を A3一枚で表現するだけ!
簡単です。

A3資料のメリット

なぜA3一枚?

・論理(ストーリー)の流れが分かりやすい
・説明時間の短縮
・必要な情報だけを伝えることができる

なぜ A3資料一枚で報告書を作るのか?を最初に説明します。

論理(ストーリー)の流れが分かりやすい

パワーポイントなどの資料はページが変わっていくうちに、論理の展開がおかしくなっても気づきにくいという特徴があります。

これはパワーポイントで資料を作成している時にも、プレゼンを聞く時にも当てはまります。

1枚の紙でまとめることで、作者は論理の破綻がないのかをしっかり確認しながら書けて、上司や関係者は論理の破綻がないかをしっかり確認しながら聞けるというメリットがあります。

説明時間の短縮

上司が忙しくて、なかなか時間が取れないと悩んでいる方は多いかと思います。

A3資料の2つ目のメリットは、聞き手が全体を一目で見渡せて短時間で、その内容を把握できることです。

話し手のあなたも、紙一枚なら伝えたい箇所を最初に説明し、聞き手の質問に応じて、それぞれの場所へ戻り説明するということができます。

この全体を一瞥できるA3資料を使った短時間での説明に慣れてくれば、話し手側も自然と結論から話す習慣がつくという二次的なメリットもあります。

PREP法

相手に伝わりやすい説明方法にPREP法があります。
Point(結論)、Reason(理由)、Example(例)、Point(結論)の順に説明する方法です。
人間は他人の話を長く聞くのが苦手です。結論から最初に話すことで、相手の理解度が格段に上がります。

必要な情報だけを伝えることができる

パワーポイントで資料をつくると、必要以上に多くのデータを載せてしまいます。
ページの区切りがいいからと余分な図や文字を入れて、1ページの見栄えのために何かを追加した記憶はありませんか?

A3資料一枚でまとめるには、想像以上に情報を減らす必要があることに気づきます。

しかし、このおかげで優先度の低いデータや自分の頑張りだけをアピールする無駄な表現などを減らすことができます。
自然と必要最小限の情報を載せた効率的な資料ができあがります。

A3資料のレイアウト

ここでは、A3資料のレイアウトの例を載せておきます。
特に決まったフォーマットはないですが、参考にしてください。

それぞれ、企画書と結果報告書の例となります。

企画書はPlan(計画)にあたるステップ①~⑤を一枚に、結果報告書はステップ①~⑧までの資料です。

しっかり資料を作って報告する場面を考えると、そのほとんどが「企画」「結果報告」となるため、この2つをしっかりおさえておきましょう。

例)A3資料 レイアウト(企画書)

例)A3資料 レイアウト(報告書)

どちらのレイアウトもステップ①~②の面積が大きくしています。
繰り返しになりますが、問題を発見するこの2つのステップを大切にしてください。

まとめ

トヨタは製造現場において日々カイゼンを行い、いかに生産性をあげるかに注力している日本のモノづくりを代表する企業です。

そのトヨタが、資料作成や報告業務といったホワイトカラーの生産性や効率にも着目して、システム化したものが今回解説したトヨタ流「問題解決の8ステップ」と「A3資料作成術」です。

汎用性の高いテクニックなので、ぜひ皆さんの業務にも活かしてください。

問題解決能力の重要性

今の時代、正解を導き出したり、課題を解決できる人材よりも、問題を見つけ出すことができる人材が貴重とされています。

ひと昔前までは『問題=生活の中で人々が不便に感じていたこと』は非常に明確な時代でした。

たとえば、食べ物を保冷することができずにすぐに腐ってしまう、洗濯は重労働で冬場は水で手が凍えて荒れる、移動や情報収集に膨大な時間がかかるなどです。
これらの問題に対する解決が冷蔵庫・洗濯機・テレビ・自動車・パソコンなど人々の生活を豊かにする製品でした。

これらがすでに行き渡っている現在、人々の生活の利便性が飛躍的に向上し、『人々の共通する不便=問題』がほとんどなくなりました。

このような時代においては、『何が問題か?』を見つけ出すスキルを持つ人材が最重要視されています。

ぜひ、今回紹介した問題解決を活用して、問題を見つけ出すことができる人材を目指しましょう。

手っ取り早く問題解決を学ぶ方法 3選


最後に、手っ取り早く問題解決を学ぶ方法とその際におすすめのエージェントやスクール、書籍の紹介をします。

①トヨタ系列の会社に転職する
②通信講座などで問題解決を学ぶ
③本を読む

①トヨタ系列の会社に転職する

トヨタ自動車だけではなく、その系列会社でも問題解決の教育を実施しています。
今の会社に不満がある方は、転職を考えてみるのも一つの手です。

②通信講座などで問題解決を学ぶ

転職までは・・・・という方には、問題解決を講座にしているスクールを活用することもできます。

LECやユーキャンなどでは問題解決のオンライン講座も実施しています。

LEC社名ロゴ

生涯学習のユーキャン

③本を読む

独学する時間を確保できるのであれば、本を何冊か読むのがおすすめ。

特におすすめなのが、下の2冊です。

付録.よく使うフレームワーク

4M

製造業における生産工程などでよく使われるフレームワークです。

4M

Man : 人
Machine : 機械
Material : 材料
Method : 方法

4P / 4C

マーケティングなどで使用されるフレームワーク。

4P(売り手の視点)

Product : 製品
Price : 価格
Promotion : 販売促進
Place : 流通

4C(買い手の視点)

Customer Value : 顧客価値
Customer Cost : 顧客が負担するコスト
Communication : コミュニケーション
Convenience : 顧客の利便性

PEST分析

経営戦略立案時に自社の取り巻く環境を把握するために使われるフレームワーク。

PEST分析

Politics : 政治
Economy : 経済
Society : 社会
Technology : 技術

例)電子決済システムのPEST分析

政治:政府がIT技術の支援に力を入れている
経済:電子決済の市場規模が拡大中
社会:コロナ禍で、貨幣や紙幣の手渡しに疑問
技術:電子決済に関する技術は年々成長

SWOT分析

事業分析によく使われるフレームワークです。

SWOT分析

Strength : 強み
Weakness : 弱み
Opportunity : 機会
Threat : 脅威

AIDMA / AISAS

消費者の購入意思決定プロセスを表わすフレームワーク。

AIDMA

Attention : 認知
Interest : 興味
Desire : 欲求
Memory : 記憶
Action : 行動

AISAS

Attention : 認知
Interest : 興味
Search : 検索
Action : 行動
Share : 共有

SNS,EC全盛の現在はAISASが、より消費者の購入意思決定プロセスに近いと言われています。

代表的なフレームワークだけでも20種類以上あります。
興味がある方はググってみてください。

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